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正義か依頼者の満足か
弁護士 松 枝 迪 夫
 弁護士になった頃は弁護士の仕事の窮極の目的を色々と考えた。当初は、社会正義の実現というような言葉にどうしても拘泥している。半世紀近く弁護士や大学教授をやってきて、最近やっと少しは世の中が解ってきたような気がするが、それで弁護士の一番大切な事は依頼者の満足と納得を得ることで、正義はその次だということを確信するに至った。
 依頼者は個々に悩みや苦しみを解決したいから相談に見える。その願いと期待に応えるには、依頼者が弁護士に対し、よくやってくれましたと感謝されるまで尽くすことである。(徹底した個人救済という点で宗教家に似ている。)その満足を得るには、依頼者への対応と言葉や態度が極めて大切である。依頼者にとって横柄な、高飛車な感じを与える言動は避けたい。弁護士本人の気持ちでは、本当はそうでなくとも、依頼者という立場の弱さからそのように受け取られ兼ねない言葉や態度は禁物である。ここが最も大切なことで、自己の主観でなく、自分の言動がどういう印象を相手に与えているかという客観的印象を重んじ、常に反省する。(言い換えれば作家的な眼を自分に向けることである。)相手を叱るような感じ、嘲笑うような感じ、また高級役人の中でたまに机に足を乗っけて顎をしゃくるような感じを与える者がいるらしいが、そのような威張った感じを与えていないかを自省するのである。)
 この言動と相談にかける時間との関係は大切である。依頼者は悩みを縷々打ち明けたい、時には論理明快でない話をする(むしろそういう人が多い)。弁護士には、自分は難しい試験を通った頭の良い人間だとうぬぼれている所がありそうであるし、実際に利口者もいる。それで依頼者の話をよく聞かないで打ち切る。その打ち切り方によっては、心無きやり方となり、深く相手を傷つけることがある。それには自分が病院にかかったときの医者の態度を他山の石とすることである。
(2005.6.27)
 

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