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弁護士と正義
弁護士 松 枝 迪 夫
 弁護士の仕事には、個別的な事件の相談を受けて解決するという臨床分野と弁護士会活動に携わるという社会活動分野とある。赤ひげ的臨床こそ本来の弁護士の仕事で、そこから得られる職業的充実感が何といっても貴重である。
 他方、社会問題や政治問題にも法律家として積極的に発言し社会を動かしてゆく仕事も益々重要となっている。従って、こうした動きを邪道として白眼視する時代は去った。しかしどこまでこの社会的活動をすればいいかという限界を忘れては、政治団体や社会改良運動自体と区別がつかなくなる。この点で一言いわせてもらえば、大学の運営に深く関わるというのはこの限界を超えているかも知れない。NPOを有志で立ち上げたらどうかという批判に答えられるだろうか。(何年か後に官庁の民営化現象と同じように弁護士会も金のかからぬ体質やスリム化するなら、大学などまず標的となろう。)
 弁護士は正義を口にするのが好きである。私が多少皮肉をこめてそう言うのは、個々の弁護士や弁護士会の動きは必ずしも正義に即しているとも思えない事が散見されるからである。その理由は、正義という概念の抽象性と便宜性にある。抽象性というのは、この概念が不明確で、アリストテレス以来いくら論議しても決まらない位鵺(ぬえ)的性格だからである。便宜性というのは、誰でも都合よくこれを頭に掲げて 運動するという極めて重宝な、はっきり言えばいい加減なものだからである(金儲け、立身出世、革命、戦争、何でもこの看板が必要、おまけに、弁護士はこの理屈づけに準備書面を何百本、何千頁と書いて腕を磨いている。)。
 
 

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