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近 況 報 告(2006年11月24日)
 今年の夏ころから、弁護士の側から新しい立法の提案をするというテーマのもと、日弁連の立法PTに参加しています。現在のところ、日弁連の立法PTでは、[1]国税局等の税務調査における弁護士の立会権の保障、[2]ディスカバリー類似の制度の導入、[3]懲罰的賠償制度の導入、[4]民事訴訟における印紙代の定額化、などの立法課題について研究を行っています。
 私は、[2]のディスカバリー類似の制度の導入についての検討を行ったのですが、米国のディスカバリーという制度を勉強すればするほど、日本と米国では民事訴訟手続の大きな違いに驚いています。
 私の感想になりますが、日本の民事訴訟では、例えば個人が企業を提訴する場合、とにかく証拠が集まりません。真実は法的に保護されるべき権利がありながらもそれが立証できないということが多いような気がしています。
 一方、ディスカバリーという制度がある米国では、個人であっても一旦訴訟を提起すればかなり詳細な証拠が入手できるようです。ディスカバリーでは、当事者の主張に関連する文書(電子ファイルを含む)や証拠物は、原則として相手方に開示しなければなりません。また、当事者は、開示された文書や証拠物などを下に当事者間だけで重要証人からの証言を録取することもできます。しかも、当事者が不当に証拠の開示を拒否したり、証拠を廃棄したりすると、法廷侮辱罪、弁護士資格の剥奪、訴えの却下、主張の制限などの制裁が課せられる虞があるため、ディスカバリーは厳格に運用されているようです。
 そのように米国では、一旦訴訟が提起されればその事件に関する証拠は原則として全て開示されることとなるため、個人であっても巨大企業を相手に十分に訴訟で戦えることになります。今年の5月にも北米トヨタに対して元社長秘書が総額215億円の賠償を求めるセクハラ訴訟が提起されましたが、このような訴訟であっても懲罰的な賠償として、北米トヨタがセクハラ対策を十分に行わなかったことなどが主張されているため、北米トヨタ内の社内情報が広範囲に渡って開示されることになるようです。
 このように米国ではディスカバリーによって広範囲の証拠が開示されるためか、連邦地方裁判所に係属する訴訟の約98%はディスカバリーが終了するまでに和解などによって終結しており、その後のトライアルまで行われるのは全体の1.5%から2%に過ぎないようです。
 日本の民事訴訟制度は、ディスカバリーを柱とする米国の訴訟制度とは大きく異なっており、ディスカバリーをそのまま日本に導入することは難しいと思われますが、いずれにしても、もっと司法手続きが尊重され、十分な証拠の下に裁判を行えるシステムが必要なのではないでしょうか。
鳥飼総合法律事務所
弁護士 福崎剛志(55期)

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